たたり

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たたり

 

 一夜明けたが、蜂の巣をつついたような騒動は収まりそうになかった。昨夜遅く、憔悴しきった瑚宝権坪が翔坪の亡骸を伴って帰宅した。今は恭子と並べて母屋に安置されている。

 朝から親戚の者や近所の者がひっきりなしに弔問に訪れた。その間に、葬儀屋は要領よく棺桶を運び込み、祭壇を設置した。潤也は、これといってなすことはなかった。ただ、すべてが夢のように過ぎていくのを、呆然と見守るしかなかった。自分の育った四国と習慣の違いはあるものの、大方は似たりよったりで、近親のものが当主の意向を聞きながら、てきぱきと動いて、葬儀の段取りを行っていた。今日は通夜で葬儀は明日にすることになっていた。潤也は少なくとも葬儀の翌日までは、ここにいなければならないだろうと思った。

 弔問客の話題の中に、いつ頃からか「たたり」とか「狗神」とか言う言葉が混じるようになっているのに潤也も気がついた。注意して聞いていると、島の女祈祷師が、狗神の祟りだと、触れ回っているということだった。高知県の狗神信仰は有名だが、ここに来てそんな話を聞くとは思っていなかったので、驚いた。そして一瞬、自分のことを言われているのではないかと思った。自分の家は狗神信仰ではないが、村の神社といい、家の神棚といい、至る所で狗神は祀られていた。このようなのは、高知では狗神信仰とは言わないが、余所に出れば、高知の狗神信仰と同列に扱われても仕方がない。でも、それと恭子や翔坪の死は関係なかろうから、すぐに先ほどの考えをうち消した。

 また別の弔問客との会話から、島では殺人事件だという噂がもっぱらだと言うことだった。特に、昨夜西屋で起こった翔坪の死は、佳奈の浴衣を着て、おかめの面を被っていたというところから、多くの人たちの疑惑を生んだらしい。こうなると、狭い島内のことだから、噂が噂を呼んで、どんな話が作られてしまうかわかったものではないと、親戚の者たちが笑いながら言った。

 午後になって、駐在所の北木巡査が訪れ、彩子の父と話をして帰った。権汰は、潤也が親戚の者たちといるところへきて、北木巡査との会話の一部始終を話した。北木巡査の話の中心は、やはり島内の噂だった。ここまで大きな騒ぎになると後々のことがあるから、一応本署に連絡して指示を仰ぐということと、葬儀と火葬の日程を確認したという。仮に司法解剖が行われるようになっても、出棺までに決定すれば間に合うということで、その時間を確認したという。

 また、巡査は、こちらでは変わったことはないかと、訪ねたそうである。crystalrabbit

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