なわとびなかま

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なわとびなかま

 

 秀ちゃんは二年生です。

 秋のよく晴れた日のことです。お母さんが言いました。

「よく晴れた日には、なわとびをして遊びなさい」

 秀ちゃんは、なわとびはきらいですが、でも、せっかくお母さんが新しいなわとびを買ってくれたので、それをもって南公園へ行きました。

 ニャゴーという声がするので、ふりかえると、黒猫ピョンでした。

「ピョン、なわとびをするんだよ。ついておいで」

 秀ちゃんがそう言うと、ピョンはさきほどと同じように、ニャゴーと鳴きました。

 そして、秀ちゃんの足に黒くてピカピカ光る毛をすり寄せながらついてきました。

 南公園は秀ちゃんの住む団地の南のほうにある公園で、砂場はもちろんのこと、すべり台やぶらんこもあります。それに公園は広くてキャッチボールやバドミントンもできるほどじゅうぶんな広さがあります。公園の東には緑の森がつづいていて、小鳥がたくさんさえずっています。

 公園にはだれもいません。秀ちゃんとピョンは公園のまん中に行って、なわとびをすることにしました。

「ピョン、どちらが先にするかじゃんけんで決めようよ」

 秀ちゃんが言いました。

「ぼく、あとでいいよ」

 ピョンが言いました。ピョンはときどき、秀ちゃんの持っていた古いなわとびをしたことがあります。でも、あまりじょうずではありません。

「そんなら、ぼくがするから見ててよ」

 秀ちゃんはそう言うと、なわとびをはじめました。白いロープがひゅんひゅんと音をたててまわると、公園のまわりが暗くなってきました。

「あれ、これはなんだ?」

 秀ちゃんはびっくりして、なわとびをやめてしまいました。      

「あれー、どうしたんだろう。ここの公園だけが明るくて、まわりが暗くなったよ」

 ピョンも驚いたように言いました。

「ピョン、気をつけろ!」

「何に気をつけるの?」

「何にって? そりゃあ、すべてのことに気をつけるのだよ」

 ほんとうのことをいうと、秀ちゃんも恐くてたまらないのです。でも、黒猫のピョンに助けを求めても、どうなるものではありません。秀ちゃんはしかたなくピョンをはげましたのです。

 こうして、秀ちゃんとピョンが話をしている間も、ずっとさきほどからのようすはかわりません。この公園だけが、うっすらと明るく、公園の外は夜のように暗いのです。

 公園のそばの道路には、街灯の蛍光灯がついて、アスファルトの道を照らしています。

「秀ちゃん、あれを見て!」

 ピョンが右の前足をあげて、公園の東のほうを指さしました。

 森の中にふたつの丸い光が見えました。だんだんとこちらに近づいてくるようです。

「わあ、大きな猫だ!」

 秀ちゃんが言いました。

「なんだ、ヒューイじゃないか」

「ヒューイ? ピョン、知ってるの?」

 そう言いながら、秀ちゃんは近よってくる大きな猫を見ていました。ピョンを五倍したよりも、もっと大きなくらいです。

「ヒューイは山猫だよ。からだは大きくて恐そうだけど、やさしいんだ。恐がらなくてもだいじょうぶだよ」

 ピョンがヒューイについて説明しているうちに、ヒューイは、秀ちゃんの前にきてしまいました。

「僕、山猫のヒューイと言うんだ。ピョンの友達だ、よろしく」

 ヒューイは口のまわりにはえた白いひげをピンとのばして、ていねいに言いました。からだは白と灰色の縞もようです。しっぽは、灰色で長いのがついていました。

 そのとき、

「おーい」

 と言って、森から走ってきたのは、きつねでした。

「野ぶどうを摘んでいたら、すっかりおくれちゃった」

 きつねは、はぁはぁと息をしながら言いました。

「秀ちゃん、きつねのコン太というんだ」

 ピョンが言いました。

「よろしく」

 コン太が言いました。

「よろしく」 

 秀ちゃんも言いました。

 秀ちゃんは、コン太とヒューイをかわりばんこに見ました。

 コン太はピョンよりも少し大きいきつねでした。

 コン太もヒューイもやさしそうに、秀ちゃんを見ています。

「ぼくたち、なわとびをしていたんだ。きみたちもしていいよ」

 秀ちゃんは、なわとびをヒューイのほうに、さしだしました。

「その前に、野ぶどうを食べようよ」

 コン太が言いました。

 コン太が持ってきた野ぶどうは、むらさき色にうれて、とてもおいしそうでした。

「ありがとう」

 ピョンが言って、さっそく小さなふさをとって食べはじめました。

「それじゃあ、ぼくも」

 と、秀ちゃんも後に続きます。山猫ヒューイも、コン太きつねもいっしょに、野ぶどうを食べました。 

「なかなかいけるね」

 ピョンが言いました。

「山の中にはいくらでもあるから、ほしくなったら、いつでもおいでよ」

 コン太が言いました。

「そうだ、こんどの森のおまつりのときには、どっさり野ぶどうを準備しておくよ」

 ヒューイがピョンをやさしく見つめながら言いました。

「森のおまつりだって?」

 秀ちゃんが聞きました。

「こんどの満月の夜だよ。ぜひ、おいでよ。ぼくがむかえに来るからね」

 コン太が言いました。

「秀ちゃん、いっしょに行こうよ」

 ピョンが秀ちゃんのほうを向いて言いました。

「行きたいな、でも、ママがいいと言えばいいが……

「なーに、だいじょうぶだよ」

 と、ヒューイが言って笑いました。

「それじゃ、なわとびをしようよ」

 ピョンが言って、みんなでなわとびをしました。かわりばんこに何度も何度もして、汗がでました。ピョンとヒューイは毛皮が厚くできていますから、フーフー言いながら休みました。

「今日は、もう帰るよ。とっても楽しかった。じゃーね」

 と、ヒューイが言いました。

「バイバイ」

 コン太が言いました。

 秀ちゃんとピョンは手をふりました。

 山猫ヒューイとコン太きつねは、公園の東の森に帰っていきました。

 気がつくと、公園のまわりがもとの明るさにもどっていました。crystalrabbit